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わかりやすくするために、何を見えなくしたのか – IT・AI活用における「デザインする」ということについて

はじめに

複雑な業務を整理する。
たくさんの情報を、わかりやすくまとめる。
新しいシステムを設計する。

こうした場面では、さまざまなものを整理し、必要な要素を残しながら、全体をわかりやすい形にしていきます。
こうした行為も「デザインする」ことだと考えています。

デザインというと、見た目を美しくすることを思い浮かべるかもしれません。
しかし、事業デザイン、業務デザイン、システムデザインなど、デザインという言葉は、見た目以外のさまざまな場面でも使われます。

そこに共通するのは、複雑なものを整理し、目的に合った形にすることです。
そして、整理する過程では、必ず何らかの選択が行われます。

何を残すのか。
何をまとめるのか。
何を省略するのか。

私はソフトウェアエンジニアだった若い頃から、ずっと自分に問いかけてきたことがあります。

「デザインした人は、省略したことに対して、どこまで責任を持つべきなのか?」

今回は、この問いについてお伝えしたいと思います。

省略されたことは、不要だったこととは限らない

例えば、会社の組織図を考えてみてください。
組織図を見れば、部門の構成や指揮命令系統がわかります。
しかし、実際の会社では、組織図に表れない関係も存在します。

部署を越えて相談している人。
困ったときに助けてくれる人。
正式な担当ではないけれど、業務が円滑に進むよう支えている人。

組織図は、こうした関係をすべて表現するものではありません。
だからといって、組織図が役に立たないわけではありません。
組織の構成を理解するという目的に対しては、必要な情報が整理されています。

ただし、組織図に描かれていない関係も、実際の会社を動かすうえで意味を持っていることがあります。
これは、業務フローやシステムの設計でも同じです。
わかりやすくするために省略したものが、別の場面では重要になるかもしれません。

省略することと、不要だと判断することは同じではないのです。

見えなくしたものが、後から問題になることもある

ある会社で、顧客からの問い合わせ対応を整理するとします。
通常の問い合わせであれば、受付から回答までの流れを決め、担当者を割り当てることで、対応を進めやすくできるでしょう。
しかし、実際には、決められた流れだけでは対応できない問い合わせもあります。

いつもと異なる事情を抱えた顧客への対応。
担当者だけでは判断できない内容。
複数の部門で確認しなければならない問題。

これらを「例外」として業務フローから省略すると、図はすっきりします。
ところが、その図をもとにシステムを構築したらどうでしょうか。
通常の問い合わせは処理できても、例外的な問い合わせが発生したとき、担当者がどう対応すればよいかわからなくなるかもしれません。
もちろん、すべての例外を業務フローに描く必要はありません。

重要なのは、例外を省略したことを認識し、その扱いを考えておくことです。

例えば、通常の流れから外れた場合には、人が状況を確認し、必要に応じて責任者へ相談できるようにする。
あるいは、システムで扱う範囲と、人が判断する範囲を明確に分ける。

すべてを表現しなくても、省略したものを必要なときに扱えるようにすることはできます。

AIを使うときも、同じことを考える

最近では、AIを使って文章を要約したり、情報を整理したり、画像を生成したりすることが身近になりました。

それ自体は悪いことではありません。
AIを使った人がその内容に責任を持つのであれば、積極的に活用してよいと考えています。
もちろん、私自身も、自分の責任のもとでAIを利用して文章や画像を作成しています。

ただ、AIが生成した文章や画像が、十分に確認されないまま使われているのではないかと感じることがあります。
いろいろな場所で「あ、これはAIでつくったな」と思えるものを見かけるたびに、生成された画像や文章を利用する編集者や投稿者は、何が省略され、どのような意味が変わった可能性があるのかを確認しているのだろうか?…そう考えることがあります。
もちろん、AIで作成したことだけを理由に、確認や責任を放棄していると決めつけることはできません。
ただ、公開する以上、内容を確認し、自分の判断として説明できることは大切だと考えています。

自分が与えた指示のうち、AIはどこを曖昧なまま受け取り、どのような前提を補って結果を生成したのか…
元の情報から何が省略され、意味が変わってしまった部分はないのか…
そうしたことを確認しないまま、どうやって「これでいい」と判断できるのだろうか…
そして、その判断をどのように公開するという判断につなげたのだろうか…

私が大切だと思うのは、この「これでいい」を何を基準に判断するかということです。
AIを使うかどうか、どのような表現を選ぶかは、発信する人自身が判断することです。
ただし、公開する以上、その内容を自分で確認し、なぜ「これでいい」と判断したのかを説明できること。
そして、その判断に責任を持つことが必要だと考えています。

AIを使うときに大切なのは、すべての情報を必ず残すことではありません。
何のために利用するのかを明確にし、その目的に照らして、何が残り、何が省略されたのかを確認することです。
そして、必要であれば元の情報に立ち返る。

AIが作成した結果を、どこまで確認し、どのような目的に使うのか。
その判断と責任は、AIではなく人間が担うべきです。

見えないものにも目を向けながら、デザインする

株式会社ワザーップがIT・AI活用を支援するときも、私は同じことを大切にしています。

経営判断に必要な情報を整理するとき。
業務の進め方を見直すとき。
ITやAIを業務に組み込むとき。

いずれの場合も、すべての情報や状況を、そのまま扱うことはできません。
目的に合わせて整理し、必要な範囲を定め、実際に利用できる形にすることが必要です。
その過程で、何を残し、何を省略するかという判断が生まれます。
だからこそ、私たちは「何を整理したか」だけでなく、次のことも考える必要があると思っています。

  • 何を省略したのか。
  • 省略したものには、どのような意味があったのか。
  • それが必要になったとき、どう扱うのか。
  • その判断と対応を、誰が担うのか。

すべての可能性を事前に把握し、あらゆる状況に対応できる設計をすることは、現実的ではありません。
また、複雑なものを必要以上に複雑なまま残してしまえば、整理する意味も失われます。
大切なのは、省略することを避けるのではなく、省略によって何が変わるのかを考えることです。
そして、実際に使い始めてからも、必要に応じて見直せるようにすることです。

わかりやすい資料をつくること。
使いやすい仕組みをつくること。
ITやAIを活用すること。

それらは、もちろん大切です。
しかし、わかりやすくなった結果、見えなくなったものにも、意味があるかもしれません。

「わかりやすくするために、何を見えなくしたのか?」

この問いを持ち続けること。
それが、私が考える「デザインする」ということの、大切な一部です。
そして、株式会社ワザーップが、どのような企業や業務を支援するときにも大切にしている姿勢です。

見えないものも考慮したIT・AI活用へ

企業の業務や状況は、常に変化しています。
今は問題なく動いている仕組みでも、事業が成長したり、担当者が変わったりすれば、これまで省略していたことが重要になるかもしれません。
だからこそ、IT・AI活用では、最初に整理・設計した内容をそのまま使い続けるのではなく、実際の業務に合わせて確認し、必要に応じて見直していくことが大切です。

株式会社ワザーップのSWITCHサービスシリーズでは、ITやAIを導入すること自体を目的にしていません。

企業が何を実現したいのかを考え、そのために必要な情報や業務を整理し、価値のある形でIT・AIを活用することを重視しています。
その際には、整理された結果だけでなく、整理する過程で省略したことにも目を向けます。

どのような状況を想定しているのか。
どこまでを仕組みで扱い、どこから人が判断するのか。
状況が変わったとき、誰が何を確認するのか。

こうしたことも考慮しながら、企業が自らの業務を理解し、必要な判断や見直しを続けられる状態を、お客様と一緒につくっていきたいと考えています。

SWITCHサービスシリーズ全体の考え方については、以下の記事で詳しく説明しています。

SWITCHサービスシリーズの考え方

また、IT・AIを活用できる業務状態をつくり、その状態を維持・改善していくための考え方については、以下の記事をご覧ください。

IT・AI活用準備SWITCHのコンセプト

IT・AIに関する経営判断の支援や、IT・AIを活用できる業務状態をつくる支援については、「IT・AI意思決定SWITCH」「IT・AI活用準備SWITCH」の各サービスページをご覧ください。

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