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IT担当者やベンダーの提案を経営判断につなげる方法

IT・AI領域の意思決定を考える(継続中)
1. IT・AI導入を「良さそう」で決める前に考えるべきこと
2. IT・AIを「分かったつもり」で経営判断しないために
3. IT・AIの経営判断で整理すべきこと
4. IT担当者やベンダーの提案を経営判断につなげる方法

はじめに

経営者の皆さんのためのIT・AI領域の意思決定支援を行う中で、考えたことや感じたことを綴るコラムシリーズ「IT・AI領域の意思決定を考える」の第4弾記事です。

ITシステムやAIの導入を検討していると、社内のIT担当者やベンダー、コンサルタントなどから、さまざまな提案を受けます。

「このシステムなら業務を効率化できます」
「AIを使えば、この作業を減らせます」
「今後を考えると、こちらへ切り替えた方がよいです」

専門家から説明を受けると、その提案がそのまま「会社として正しい選択」に見えることがあります。
しかし、技術的に良い提案であることと、自社にとって経営上よい判断であることは同じではありません

経営者や事業責任者が行う必要があるのは、ITやAIの専門家と同じレベルで技術を評価することではありません。
提案された内容を、自社の目的や状況と結びつけて考えることです。

提案する側と、判断する側では見ているものが違う

IT担当者やベンダーが悪いという話ではありません。
それぞれの立場によって、主に見ているものが違います。
IT担当者であれば、

  • 技術的に実現できるか
  • 現在のシステムと接続できるか
  • セキュリティ上問題がないか
  • 運用できるか

といった点を重視するでしょう。
ベンダーであれば、自社の商品やサービスによって、どのような課題を解決できるかを説明します。
どちらも重要な情報です。
一方で、経営判断では、それだけでは足りません。
たとえば、

  • そもそも何を解決したいのか
  • 今、その課題に取り組む優先度は高いのか
  • 費用に見合う効果が期待できるのか
  • 導入後にどのような負担が増えるのか
  • 他に選択肢はないのか

といったことも考える必要があります。
つまり、専門家からの提案は重要な判断材料の一つですが、提案そのものが経営判断の答えではありません。

「できること」ではなく「自社にとってどういう意味があるか」を考える

ITやAIの提案では、「何ができるか」が中心になりやすくなります。
たとえば、

「このAIなら問い合わせ内容を分類できます」

という説明があったとします。
技術的に分類できることは重要です。
しかし、経営判断として考えるなら、さらに確認したいことがあります。

現在、問い合わせ分類にどれくらいの負担が発生しているのでしょうか。
AIを導入することで、その負担はどの程度変わるのでしょうか。
AIの結果を誰かが確認する必要はないでしょうか。
利用料や設定、運用、メンテナンスを含めても価値があるでしょうか。
そして、その課題は今取り組むべき課題なのでしょうか。

ここまで整理して初めて、
「その技術が使えるか」から「自社がそれを行うべきか」へ話を進めることができます。

提案を受けたら、少なくとも5つの視点で整理する

提案内容を経営判断につなげるために、最低限、次の5つを整理してみると考えやすくなります。

1. 目的

まず確認したいのは、

何のための提案なのか

です。

売上を増やしたいのか。
人手不足に対応したいのか。
ミスを減らしたいのか。
事業拡大に備えたいのか。

目的が曖昧なままでは、その提案が良いかどうかも判断できません。

2. 自社の状

同じシステムでも、会社によって価値は変わります。
現在の業務量、人員、既存システム、社内スキル、今後の事業計画などによって、適切な選択は異なります。
「一般的に良い」ではなく、

今の自社に合っているか

を見る必要があります。

3. 効果

提案ではメリットが説明されます。
その効果が、自社ではどの程度期待できるのかを考えます。
ここでは、可能であれば、

「便利になる」
「効率化できる」

だけでなく、
何が、どの程度変わるのかまで整理します。

4. 新たに発生する負担

ITやAIを導入すると、既存の作業が減る一方で、新しい作業が生まれることがあります。
たとえば、

  • 初期設定
  • データ移行
  • 社内説明
  • 操作方法の習得
  • 出力結果の確認
  • 例外対応
  • アカウント管理
  • 継続的なメンテナンス

などです。
導入によって減る作業だけでなく、新しく増える作業も含めて見る必要があります。

5. コストとリスク

初期費用だけでなく、月額費用、保守費用、社内工数なども考えます。
また、

  • 想定した効果が出ない
  • 特定のサービスに依存する
  • 業務が止まる
  • 情報管理上の問題が起こる

といったリスクも確認します。
大切なのは、リスクをゼロにすることではありません。
どのようなリスクがあり、自社として受け入れられるかを判断することです。

提案に対して、すぐに「採用か却下か」を決めなくてもよい

提案を受けると、

「導入するか、しないか」

の二択で考えがちです。
しかし、実際の経営判断にはもっと多くの選択肢があります。
たとえば、

  • 提案通り進める
  • 対象範囲を限定して進める
  • 別の方法を比較する
  • 不足している情報を追加で確認する
  • 時期を延期する
  • 現在の運用を続ける
  • 今回は導入しない

といった判断があります。
良い提案を受けたからといって、今すぐ実行することが正しいとは限りません。
逆に、最初の提案に不明点が多いからといって、すぐに却下する必要もありません。

経営者がITやAIの専門家になる必要はない

ITやAIの経営判断について考えると、

「自分も技術を詳しく勉強しなければ判断できないのではないか」

と感じる方もいるかもしれません。
もちろん、一定の知識は役に立ちます。
しかし、経営者や事業責任者が、IT担当者やベンダーと同じレベルの専門知識を持つ必要はありません。
分からない技術的な部分は、専門家に確認すればよいのです。
経営側が担うべきなのは、その専門情報を、

  • 自社は何を実現したいのか
  • 今の事業にどう関係するのか
  • どのような効果と負担があるのか
  • コストやリスクをどう評価するのか

という経営の視点につなげることです。
専門家は専門的な材料を提供し、経営者はその材料を使って自社として判断する。
この役割を分けて考えることが重要です。

おわりに:提案を「判断できる形」に変える

IT担当者やベンダーからの提案には、経営者だけでは把握しにくい専門的な情報が含まれています。
その情報は、IT・AIについて判断するうえで欠かせません。
一方で、専門的に正しいことと、自社にとって実行すべきことは同じではありません。
提案を受けたときは、そのまま採用するか否定するのではなく、

自社の目的、事業状況、期待できる効果、新たな負担、コスト、リスクなどと結びつけ、経営判断に使える形へ整理することが重要です。

そして、整理した結果、

「今は導入しない」
「もう少し調べる」
「範囲を限定して試す」

という結論になることもあります。
IT・AIに関する意思決定は、導入するために行うものではありません。
自社にとって何が適切なのかを決めるために行うものです。

IT・AI意思決定SWITCHでは、IT・AIに関する技術情報や社内外からの提案を、経営者・事業責任者が判断に使える形へ整理する支援を行っています。
IT・AIに関する提案を受けているものの、「何を基準に判断すればよいのか分からない」という場合は、IT・AI意思決定SWITCHのサービス内容もご覧ください。

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