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IT・AIを「分かったつもり」で経営判断しないために

IT・AI領域の意思決定を考える(継続中)
1. IT・AI導入を「良さそう」で決める前に考えるべきこと
2. IT・AIを「分かったつもり」で経営判断しないために

はじめに

経営者の皆さんのためのIT・AI領域の意思決定支援を行う中で、考えたことや感じたことを綴るコラムシリーズ「IT・AI領域の意思決定を考える」の第2弾記事です。

ITやAIについて調べようと思えば、今はいくらでも情報が見つかります。
ニュース、Web記事、SNS、書籍、セミナー。
生成AIに質問すれば、専門用語についてもかなり分かりやすく説明してもらえます。

以前と比べれば、経営者がIT・AIについて知るためのハードルは大きく下がりました。
一方で、ここには注意したいことがあります。

IT・AIについて知っていることと、自社としてどう判断すべきか分かっていることは、同じではないということです。

「この技術はこういうものらしい」
「このサービスは便利そうだ」
「最近はこのAIが注目されている」

そこまで理解できていても、

では、自社は今これを導入するべきなのか?

この問いになると、話は変わります。

今回は、IT・AIを「分かったつもり」で判断しないために、経営者・事業責任者の皆さんが押さえておきたい考え方を整理していこうと思います。

「知っている」だけでは決められない

たとえば、取引先からAIサービスを勧められたとします。
サービスの説明を聞き、Webでも調べて、

  • 何ができるのか
  • どんな技術なのか
  • 他社ではどう使われているのか

といったことは理解できたとします。
それでも、自社で導入するかどうかを決めるには、別の情報が必要です。

自社では何のために使うのか。
今の業務のどこに関係するのか。
本当にその方法でなければならないのか。
導入後に誰が運用するのか。
確認や修正の仕事は増えないのか。
費用に見合う効果が期待できるのか。
今やるべきなのか、半年後でもよいのか。

こうしたことまで整理しなければ、経営判断に必要な材料が十分にそろっているとはいえません。

これはAIに限りません。

システム開発会社から新しいシステムを提案されたとき。
SaaSの契約を更新するとき。
既存システムを改修するか刷新するか迷ったとき。
社内のIT担当者から新しい仕組みを提案されたとき。

技術やサービスについて理解することは必要です。
理解できたからといって、そのまま『導入した方がよい』という結論になるわけではありません。

経営者がIT・AIの専門家になる必要はない

では、IT・AIについて経営判断をするために、経営者自身がITやAIを専門家レベルまで勉強する必要があるのでしょうか。

必ずしもそうではありません。

経営者に必要なのは、すべての技術を詳しく説明できることではなく、「自分がどこまで分かっていて、どこから先は専門的な確認が必要なのか」を把握することです。
IT担当者、システム会社、ベンダー、コンサルタントなど、専門的な確認が必要なことは、IT担当者やシステム会社、ベンダー、コンサルタントなどに確認すればよいのです。

一方で、専門家に任せきれない部分もあります。
たとえば、

  • 何のために投資するのか
  • どの課題を優先するのか
  • どこまで費用をかけるのか
  • どのリスクを受け入れるのか
  • 今実施するのか、見送るのか

といったことです。
これらは技術だけでは決められません。
事業の状況や経営方針を踏まえ、最終的には経営側が判断する必要があります。

専門的な説明を「経営判断の材料」に変える

IT・AIについて判断しづらい理由の一つは、情報が足りないことだけではありません。
情報はあるものの、経営判断に使える形になっていないことがあります。

たとえば、ベンダーから、「この仕組みを導入すればAPI連携によってデータを自動同期できます」と説明されたとします。
技術的には正しい説明かもしれません。
しかし、経営判断をするには、そこからさらに、

  • 自社では何の作業が変わるのか
  • どの程度の効果が期待できるのか
  • 導入時にどんな作業が必要なのか
  • 導入後の運用負担はどの程度か
  • 他の選択肢はないのか
  • どんなリスクがあるのか

まで見なければなりません。
つまり必要なのは、専門的な情報をそのまま受け取ることではなく、自社の目的、期待する効果、負担、コスト、リスクなどと結びつけて考えることです。

社内にIT担当者がいる場合も同じです。
IT担当者の説明が悪いという話ではありません。

技術の説明と経営判断では、見ているものが違います。
専門的な情報を、経営として判断できる形につなぎ直す必要があります。

こちらも参考にしてください。

IT・AI導入を「良さそう」で決める前に考えるべきこと

「分かったつもり」を避けるために整理したいこと

IT・AIについて判断するときは、すぐに「導入する・しない」を決めるのではなく、一度、判断材料を整理してみると考えやすくなります。
たとえば、次のような項目です。

  • 目的:何を解決するための話なのか
  • 事実:現時点で確認できていることは何か
  • 推測:確認できた事実から、自分たちが推測していることは何か
  • 期待:実施によって、こうなってほしいと期待していることは何か
  • 選択肢:導入以外の方法はないか。現状維持や延期も含めて考えたか
  • 希望的な前提:根拠を十分に確認しないまま、『おそらく大丈夫』『きっとこうなる』と置いている前提はないか
  • 効果:どのような変化を期待しているのか
  • 新しく発生する負担:確認、修正、教育、運用、保守などは増えないか
  • コスト:導入費だけでなく、継続費用や社内の対応時間も含めてどうか
  • リスク:セキュリティ、情報管理、サービスへの依存、業務停止などをどう考えるか
  • 不足している情報:今の時点では何が分からず、誰に確認する必要があるのか

こうして整理すると、「サービスについては分かった」という状態と、「自社として判断するための材料がそろった」という状態が、別のものであることが見えてきます。

また、整理した結果…今は導入しない/もう少し調べる/時期をずらす/別の方法を選ぶ、といった結論になることもあります。。

それも、十分に経営判断といえます。

大切なのは、詳しくなることより「判断できる状態」をつくること

ITやAIは変化が速く、新しいサービスも次々と登場します。

そのすべてを経営者が追い続け、専門家と同じレベルまで理解するのは現実的ではありません。
だからこそ重要なのは、何でも自分で詳しく理解しようとすることではなく、自社として判断するために何を確認すべきかを整理できることです。

技術的なことは専門家に確認する。
事業上の目的や優先順位は経営側で考える。
その間にある情報を、経営判断に使える形へ整理する。

この役割分担ができれば、IT・AIについて「全部分からないと決められない」と考える必要はありません。
逆に、少し知識があるからといって、「だいたい分かったから、これで進めよう」と急いで決める必要もありません。

IT・AIの経営判断で大切なのは、知識量を競うことではなく、自社にとって必要な判断材料がそろっているかを確認することです。

IT・AI意思決定SWITCHでは、IT・AIに関する技術やサービスを一方的に勧めるのではなく、経営者が判断するために必要な目的、事実、前提、選択肢、効果、負担、コスト、リスクなどを整理します。

最終的に『進める』『進めない』『時期をずらす』『もう少し調べる』など、どの選択肢を取るかは経営者自身の判断です。

IT・AIについて説明を受けても経営としてどう判断すればよいか整理できないときや、社内・ベンダーからの提案を自社の経営判断につなげたいときは、IT・AI意思決定SWITCHについてご覧ください。

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