
業務カルテという考え方
はじめに
株式会社ワザーップが提供する「IT・AI活用準備SWITCH」では、顧客企業の業務を可視化・分析し、業務ごとに「業務カルテ」を作成します。
業務カルテは、IT・AI活用準備SWITCHにおける中心的な成果物の一つです。
ただし、業務の流れを図にして納品するだけの資料ではありません。
業務カルテには、大きく3つの役割があります。
- IT・AI活用準備SWITCHで確認した業務の現状、問題、課題、対応方針を記録する
- 経営層、業務責任者、担当者、協力ベンダー、コンサルタント(ワザーップ社も他のコンサル会社も含む)などが、同じ業務について共通の言葉で話せる状態をつくる
- IT・AI活用 Ready状態をつくり、その状態を継続的に維持・改善するための基盤として使う
誰が、何を、どの順番で行っているのか。
どのような情報を受け渡しているのか。
どこで判断が行われているのか。
どの部分に問題があり、何に取り組む必要があるのか。
こうした内容を関係者の頭の中だけに置かず、業務単位で共有できる形にしたものが業務カルテです。
業務カルテはIT・AI活用準備SWITCHの成果物
IT・AI活用準備SWITCHは、まず現在の業務を整理し、ITやAIを活用した場合に効果を出しやすい状態へ変化させるサービスです。
株式会社ワザーップでは、この状態を「IT・AI活用 Ready状態」と呼んでいます。
IT・AI活用準備SWITCHでは、経営者や責任者との壁打ち、現場へのヒアリング、既存資料の確認などを通して、現在の業務を棚卸しします。
そのうえで、業務ごとに次のような内容を整理します。
- 業務の目的と概要
- 業務に関わる人、部門、取引先
- 使用しているツールやシステム
- 作業と情報の受け渡し
- 業務の中で行われている判断
- 現在発生している問題
- 今後取り組むべき課題
- 問題や課題への対応方針
- 実施した対応と、その後の変化
- 将来的なIT活用・AI活用・データ活用の可能性
これらを業務単位でまとめたものが業務カルテです。
業務カルテを作ることで、業務がどのように行われているかを可視化するだけでなく、IT・AI活用に向けて何を整える必要があるのかを明確にできます。
なぜ業務単位でカルテを作るのか
企業全体の業務を一つの大きな資料にまとめると、情報量が多くなり、個々の問題や課題が見えにくくなります。
たとえば、一つの企業の中には次のような業務があります。
- 営業業務
- 見積業務
- 契約業務
- 案件管理業務
- 請求書処理業務
- 顧客対応業務
- 採用業務
- 社内申請業務
これらは関係し合っていますが、担当者、目的、扱う情報、発生している問題はそれぞれ異なります。
そこで業務カルテでは、一つの業務を一つの単位として扱います。
対象を業務単位に分けることで、
- その業務に関係する人
- その業務に含まれるタスク
- その業務で使う情報
- その業務で起きている問題
- その業務に必要な対応
- 他の業務との関係
を具体的に確認できます。
一つの業務に集中して話せるため、関係者同士の認識も合わせやすくなります。
さらに、複数の業務カルテをつなげて見ることで、業務間の受け渡しや、企業全体の業務構造も把握できるようになります。
関係者が共通の言葉で業務を語るための資料
企業の業務には、さまざまな立場の人が関わります。
- 経営者・経営層
- 事業責任者
- 部門長
- 業務担当者
- 情報システム担当者
- 外部コンサルタント
- システム開発会社
- ツールやサービスの提供会社
- 会計士や社会保険労務士などの外部専門家
それぞれの立場によって、同じ業務に対する見方は異なります。
同じ事柄を異なる表現で捉えていたり、同じ連携について話していても、どの立場を中心に見るかが異なっていたりします。
どの視点も必要ですが、共通の資料がないまま話を進めると、同じ業務について話していても認識にズレが生じます。
業務カルテには、業務の流れ、問題が発生している場所、関係者への影響、対応の考え方を記載します。
関係者が同じ業務カルテを見ながら話すことで、
「営業業務を効率化したい」
という抽象的な話から、
「営業担当者が提案書を作成する際に、システム開発部門から受け取った技術情報を十分に理解できていない」
「営業担当者とシステム開発マネージャーが、同じ言葉で話すための仕組みが必要である」
といった具体的な話に進められます。
業務カルテは、誰か一人の見方を正解にするための資料ではありません。
異なる立場の人たちが、それぞれの視点を持ち寄りながら、共通の対象を見て話せるようにするための資料です。
曖昧な「大変」を、具体的な問題として整理する
業務についてヒアリングすると、次のような言葉がよく出てきます。
- 忙しい
- 手間がかかる
- 連携がうまくいかない
- 担当者に負担が集中している
- ミスが多い
- システムが使いにくい
- 情報が見つからない
- 属人化している
これらは重要な問題意識ですが、そのままでは具体的な対応を決められません。
たとえば「請求書処理が大変」という話だけでは、何を改善すべきか判断できません。
業務を詳しく見ると、実際には次のような状態があるかもしれません。
- 請求書の受付方法がメールと郵送に分かれている
- 経理担当者が請求書の内容を台帳に転記している
- 購買や発注の情報を部門長に確認している
- 部門長は本来の業務の合間に確認している
- 経理担当者は回答が来るまで処理を進められない
- 承認や確認の忘れが発生する
- 同じ内容を請求書台帳と会計ソフトに入力している
ここまで整理できれば、「請求書処理が大変」という感覚的な表現を、具体的な業務上の問題として共有できます。
問題が具体化されれば、役割分担を見直すのか、情報の受け渡し方法を変えるのか、データを一元管理するのか、ITシステムを使うのかといった検討が可能になります。
業務カルテは、現場の感覚や経営者の問題意識を否定するものではありません。
それらを関係者が共通して扱える形に整理するものです。
業務カルテでは「問題」と「課題」を分ける
業務カルテでは、「問題」と「課題」を分けて記録します。
問題
問題とは、現在の業務ですでに発生しており、解消すべき状態です。
たとえば、次のようなものです。
- 確認待ちにより業務が停止する
- 担当者間の連携がスムーズに行われていない
- 同じ情報を複数の場所に入力している
- 判断基準が担当者ごとに異なる
- 確認漏れや入力ミスが発生している
- 顧客や取引先に迷惑をかけるケースが起きている
- 特定の担当者がいないと業務を進められない
課題
課題とは、現在の問題への対応に限らず、より良い業務状態をつくるために取り組むべきことです。
たとえば、次のようなものです。
- 部門間で共通の言葉を使えるようにする
- データを蓄積し、後から分析できる状態をつくる
- オンラインによる情報の受け渡し方法を追加する
- 既存の会計ソフトや業務システムとの連携可能性を確認する
- 将来的なIT活用やAI活用を見据えてデータを整備する
- 業務変更後も改善を続けられる運用をつくる
現在発生している問題と、中長期的に取り組む課題を混ぜてしまうと、対応の優先順位が分かりにくくなります。
業務カルテ上で分けて整理することで、
- まず解消する必要がある問題
- 調査や検討が必要な課題
- 将来的に取り組むべきテーマ
を区別して話せるようになります。
業務カルテに含まれる内容
対象業務によって詳細は変わりますが、業務カルテには主に次の内容を記載します。
業務の概要
対象業務の目的、事業上の役割、関係する部門、現在認識されている問題、将来目指したい状態などをまとめます。
業務を改善する理由と、事業にとっての重要性を関係者で共有するための項目です。
業務を最適化し、IT・AI活用 Ready状態を獲得・維持していく中で、判断に迷ったときや想定外の問題が発生したときに立ち戻れるよう、業務の目的と役割を明確にしておきます。
業務シーケンス
現時点での業務の形・業務フローをシーケンス図として可視化します。
業務に関わる担当者、部門、顧客、取引先、ツール、システムを並べ、タスクや情報・データの受け渡しを記述しておきます。
条件による分岐、繰り返し、承認、システムへの登録、例外的な対応も含めて整理します。
未対応の問題や課題についても、業務シーケンス上の該当箇所と紐づけます。
問題一覧
現在発生している問題、その背景、関係者への影響、顧客や取引先への影響、対応の方向性などを記録します。
問題を担当者個人の能力不足として扱うのではなく、業務の役割分担、情報、判断、作業順序などの構造として確認します。
課題一覧
現在把握している、より良い業務状態をつくるための取り組み事項を記録します。
ITやAIを活用する可能性も含まれますが、ツール導入を前提にはしません。
関係者へのヒアリング、既存システムの仕様確認、費用、セキュリティ、運用負担などを確認し、実現可能性を判断します。
対応履歴
問題や課題に対して実施した内容を時系列で記録します。
たとえば、次のような履歴です。
- 業務スキームを変更した
- 役割分担を定義した
- 受け渡す情報を定義した
- Excelによる管理を開始した
- マニュアルを作成した
- 関係者向けの勉強会を開催した
- システムの要件定義を行った
- システムを開発した
- 新しい業務運用を開始した
- 運用開始後に業務シーケンスを更新した
対応履歴があることで、現在の業務がなぜその形になっているのかを確認できます。
担当者や協力会社が変わった場合でも、過去の判断や経緯を共有しやすくなります。
メモと将来構想
すぐには対応しないものの、将来的なIT活用、AI活用、データ活用につながる可能性を記録します。
たとえば、請求書のデータを案件管理データと結びつけることで、案件別のコスト分析、資材発注、取引先評価などに活用できる可能性があります。
現時点では実施できなくても、将来の可能性を記録しておくことで、現在の業務整理やデータ管理をどのように行うべきか考えられます。
業務カルテはIT・AI活用 Ready状態をつくるためのツール
ITやAIを業務で活用するためには、業務側の前提が整理されている必要があります。
ITシステムで作業を代行するには、次の内容を定義する必要があります。
- どの情報を入力するのか
- どの条件で処理するのか
- 誰が何を承認するのか
- どのデータを保存するのか
- どのような結果を出力するのか
AIで情報整理や判断支援を行う場合にも、次の内容が必要です。
- 業務の目的
- AIに渡す情報
- 判断の前提
- 期待する出力
- 人間が確認する範囲
- AIに任せる範囲と、人間が担う範囲
業務カルテを作成する過程で、業務の目的、作業、情報、判断、役割、問題、課題を整理すると、ITやAIを活用するための前提が見えるようになります。
その結果、
- ITを使って作業を代行できる部分
- データを管理すべき部分
- AIで情報整理を支援できる部分
- 人間の判断として残すべき部分
- ITやAIを入れる前に業務を見直すべき部分
を区別して検討できます。
業務カルテは、システムやツールを導入するための要望一覧ではありません。
IT・AI活用の前に、業務側に必要な準備ができているかを確認し、IT・AI活用 Ready状態をつくるためのツールです。
業務カルテはReady状態を維持するためにも使う
IT・AI活用 Ready状態は、一度つくれば終わりではありません。
企業や組織は変化し続けます。
- 事業内容が変わる
- 商品やサービスが増える
- 担当者や責任者が変わる
- 顧客や取引先の要望が変わる
- 法律や業界ルールが変わる
- 新しいツールやシステムを導入する
- ITやAIの活用範囲が広がる
こうした変化が起きると、業務の流れ、役割、情報、判断の前提も変わります。
以前は整理されていた業務でも、変化に対応せず放置すれば、実際の業務と資料の内容が合わなくなります。
業務カルテでは、変更した業務シーケンス、発生した問題、新しく見つかった課題、実施した対応を継続的に記録します。
たとえば、新規作成時の業務カルテには、現在の業務と問題・課題が記録されます。
その後、役割分担の見直し、業務スキームの変更、マニュアル作成、システムの導入などが行われると、その内容を対応履歴に追加し、業務シーケンスも更新します。
つまり、業務カルテは完成した資料を保管するためのものではありません。
企業の変化に合わせて更新し、IT・AI活用 Ready状態を維持・改善するために使い続けるツールです。
IT・AI活用準備SWITCHの後続サービスにも引き継がれる
IT・AI活用準備SWITCHによってIT・AI活用 Ready状態をつくった後、必要に応じて「IT活用SWITCH」や「AIプラスSWITCH」の利用を検討いただけます。
IT活用SWITCHでは、業務における定型的な作業の代行、データ管理、業務フロー管理を仕組みとして実装します。
AIプラスSWITCHでは、情報の整理や構造化、人間の認識・理解・判断を支援する仕組みを構築します。
これらの後続サービスを進める際にも、業務カルテが共通の資料になります。
IT・AI活用準備SWITCHで整理した、
- 対象業務の目的
- 現在の業務シーケンス
- 関係者の役割
- 使用する情報やデータ
- 現在の問題
- 今後の課題
- 対応の経緯
を、システム開発担当者やAI活用担当者と共有できます。
そのため、協力ベンダーも、機能要件だけでなく対象業務の背景や目的を共有したうえで、実装を検討しやすくなります。
IT・AI活用準備SWITCH、IT活用SWITCH、AIプラスSWITCHの間で共通の言葉を維持することも、業務カルテの重要な役割です。
まとめ
業務カルテは、IT・AI活用準備SWITCHにおける中心的な成果物の一つです。
業務の流れを可視化するだけではなく、
- 現在の業務状態
- 発生している問題
- 今後取り組む課題
- 対応の方針
- 実施した内容
- 業務の変化
- 将来的なIT・AI・データ活用の可能性
を業務単位で記録します。
そして、顧客企業の経営層、業務責任者、担当者、協力ベンダー、コンサルタント(ワザーップ社も他のコンサル会社も含む)などが、同じ業務について共通の言葉で話せる状態をつくります。
業務カルテは、一度作成して終わる報告書ではありません。
IT・AI活用 Ready状態をつくり、企業や業務の変化に合わせて、その状態を維持・改善するために継続して使用するツールです。
ITやAIの活用を検討しているものの、自社の業務がどのような状態にあるか分からない場合は、まず、関係者が業務について共通の言葉で話せる状態をつくることが重要です。
「IT・AI活用準備SWITCH」では、経営者・責任者との壁打ち、現場へのヒアリング、資料確認を通して業務を可視化・分析し、業務ごとに業務カルテを作成します。
そのうえで、IT・AI活用 Ready状態をつくるために必要な対応を整理し、その状態の維持と、将来的なIT活用・AI活用まで継続的に支援します。







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