
そのAIサービス導入、本当に業務活用につながっていますか?
はじめに
生成AIを使って、文章を作る。
情報を要約する。
内容を整理する。
これまで人が行っていた作業をAIに任せることで、作業そのものが楽になることがあります。
では、その状態を「業務でAIを活用できている」と言えるでしょうか。
今回は、すでにAIサービスを使っている企業に向けて、
「そのAI活用は、業務全体の中でどのような役割を持っているのか」
を考えるための問いをお渡しします。
AIで一つの作業が楽になった。その前後はどうなっていますか?
事業における業務というのは、複数の作業(タスク)の連続した関係性の上で定義されています。
作業(タスク)は1つの単位であり、担当者に割り振られるものですが、1つの作業(タスク)が単独で存在しているわけではありません。
また、1つの作業(タスク)には「入力(想定される出力も含む)/処理/出力」が含まれています。
入力や出力が意識されていなければ…前工程や次工程のことを考えない単なる「処理」として扱われているとすれば、それは「IT・AI活用 Ready状態」であるとはいえません。
(IT・AI活用 Ready状態についてはこちらをご覧ください)
AIサービスを導入されている中小企業でよく見るケースは…
業務全体を考えずに、単一の作業(タスク)…しかも、そのタスクの処理部分を置き換える導入をされている
…というケースです。
それでも、経営者や事業責任者の方は「我々はAIを業務で活用している」と言い切ります。
私の見解は
作業の一部をAIで置き換えただけ。業務活用になっていない。
です。
「ITやAIを業務に活用する」とは、業務の一部もしくは複数の作業(タスク)を「入力/処理/出力」の定義を含めて置き換えて効率化や高い作業品質を担保することです。
この考え方をベースに、貴社のAIサービス導入について考える5つの問いを次のセクションに挙げました。
ぜひこの機会に、各問いについて考えながら、現在利用しているAIサービスが業務の中でどのように使われているのかを棚卸ししてみてください。
「何ができるか」ではなく、業務の中で考えるための5つの問い
問1 AIを使っているその作業は、業務の中で何を受け取り、何を次へ渡す作業でしょうか?
まず、AIを使っている作業だけを切り出さず、その前後とのつながりを確認します。
一つの作業には、その作業を始めるために必要な情報や条件があります。
そして、その作業から生まれた結果は、次の作業や判断に使われます。
考えてみてください。
- その作業には、前の工程から何が渡されているでしょうか。
- その作業の結果は、誰が、何のために使っているでしょうか。
- その作業が止まったり、結果が変わったりすると、後の工程にはどのような影響があるでしょうか。
その作業が業務の中でどのような役割を持っているのかが分からなければ、AIによって処理だけを速くしても、それが業務全体にどのような価値を生んでいるのかは分かりません。
問2 AIには、その作業に必要な情報や前提を渡せていますか?
AIは、与えられた情報や指示をもとに結果を生成します。
しかし、実際の業務では、処理対象となる情報だけでなく、
- 過去の経緯
- 業務上のルール
- 判断基準
- 利用できる情報
- 守るべき条件
- 例外として扱うべき状況
などが関係していることがあります。
AIが何らかの結果を出せることと、業務に必要な前提を踏まえた結果を出せることは同じではありません。
今AIに渡している情報は、その作業を業務の中で行うために必要な前提を含んでいるでしょうか。
問3 AIから出てきた結果は、そのまま次の作業に使える状態になっていますか?
AIが結果を出した時点で、その作業が終わるとは限りません。
実際には、
- 人が内容を確認する
- 事実関係を調べ直す
- 必要な修正を行う
- 業務上のルールに合っているか確認する
- 状況に応じて人が判断する
- 次の作業で使える形に整える
といった対応が必要になることがあります。
そこで考えたいのは、
AIが結果を出した後、人は何を確認し、何を修正し、何を判断しているのか
ということです。
AIの出力は、業務の次の工程へそのまま渡せる状態でしょうか。
それとも、人が追加の処理を行うことで、初めて業務で使える状態になっているでしょうか。
問4 AIを使ったことで減った作業と、新しく増えた作業は何でしょうか?
AIによって、一部の作業時間が短くなったり、人が行っていた処理が減ったりすることがあります。
一方で、
- AIに渡す情報を準備する
- 指示や利用方法を整える
- 出力内容を確認する
- 間違いや不足を修正する
- 例外的なケースを人が処理する
- 利用ルールを管理する
- AIサービスや仕組みの変更に対応する
といった新しい作業が発生している可能性もあります。
一つの作業だけを見ると楽になっていても、前後の工程や運用まで含めると、業務全体の負担は別の形に変わっているかもしれません。
減った作業だけでなく、新しく発生した作業まで含めると、業務全体はどのように変わったでしょうか。
問5 このAI活用を「続ける価値がある」と、何を基準に判断しますか?
「便利になった」
「作業が速くなった」
「AIを使えるようになった」
という変化も、AI活用を評価する材料の一つです。
ただし、それだけで業務全体として価値が生まれたとは限りません。
たとえば、
- 業務全体にかかる時間
- 作業や成果物の品質
- 確認や修正にかかる負担
- ミスや対応漏れ
- 担当者によるばらつき
- 運用や管理に必要な負担
- 継続して利用するためのコスト
- 業務上の目的にどの程度つながっているか
など、評価の観点はいくつも考えられます。
何を重視するかは、企業や業務によって異なります。
大切なのは、
「AIで何ができるようになったか」だけではなく、「何をもってこのAI活用に価値があると判断するのか」を自社で持つこと
です。
AIを使っている作業ではなく、その作業がある「業務」を見てみる
今回の5つの問いに、決まった正解はありません。
AIを使い続けるという判断もあれば、使い方を変えるという判断もあります。
利用する範囲を狭くすることや、いったん利用を止めることが適切な場合もあります。
重要なのは、AIサービスで何ができるかだけを見て判断するのではなく、
- その作業は業務の中で何を担っているのか
- 何を入力として必要としているのか
- 出力は次の作業でどう使われるのか
- 人はどこで確認・判断するのか
- 業務全体では何が変わったのか
を整理することです。
AIによって一つの処理が楽になっている。
それ自体には意味があります。
ただし、それを「業務でのAI活用」として評価するのであれば、その処理だけではなく、前後につながる業務まで見てみる必要があります。
まずは、現在AIを使っている一つの作業を選び、
「この作業の前には何があり、後には何があるのか?」
から整理してみてはいかがでしょうか。
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AIを活用する前に、業務の流れや情報、判断などを整理する必要性について説明しています。
ITやAIを活用するために、業務や情報がどのような状態になっている必要があるのかを説明しています。
自社の業務について整理したい場合
今回の問いは、AIサービスを使うべきかどうかを判定するためのものではありません。
まずは自社で、AIを使っている作業の前後を含めて整理してみることができます。
そのうえで、
「一つの作業ではなく、業務全体をどう整理すればよいか分からない」
「AIをどこで使い、どこを人が担うべきか整理したい」
「現在のAI活用を業務全体の視点から確認したい」
といった場合には、IT・AI活用準備SWITCHで、業務・情報・タスクの状態を整理する支援を行っています。



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