
よい手段を選ぶために、まず考え方を持つ
はじめに
企業を経営していると、さまざまな課題や問題が発生します。
業務が思うように進まない。
情報がうまく共有されない。
一部の担当者に仕事が集中している。
人を増やしても、なかなか余裕が生まれない。
ITツールやAIを試してみたものの、期待した成果につながらない。
こうした状況に直面したとき、多くの場合、私たちは解決のための「手段」を探します。
新しいツールを導入する。
システムを開発する。
AIを使う。
マニュアルを作る。
人を採用する。
外部の専門家に依頼する。
目の前に問題がある以上、それを解決する手段を探すことは自然です。
実際、適切な手段を採用することで、問題が解消されることもあります。
しかし、私たちはSWITCHサービスシリーズを提供する中で、手段を選ぶ前に確認すべきことがあると考えています。
それは、企業や組織の中に、その手段を選ぶための「考え方」があるかどうかです。
手段から考えることが悪いわけではない
最初に明確にしておきたいのは、手段から考えること自体が間違いなのではない、ということです。
問題が起きているときには、早く対処しなければならないこともあります。
問い合わせ対応が追いつかないのであれば、問い合わせ管理ツールを導入する。
社内の情報共有が進まないのであれば、チャットや情報共有のサービスを導入する。
作業に時間がかかっているのであれば、自動化ツールやAIの利用を検討する。
どれも、問題への対応としては合理的です。
ただし、手段から始める場合には注意が必要です。
その手段によって目の前の問題には対処できても、なぜその問題が起きたのか、どのような状態を目指すべきなのかが整理されないまま残ることがあるからです。
問題が表面的に解消されたように見えても、別の場所で似た問題が起きれば、また新しい手段を探さなければなりません。
そのたびにツールを探し、比較し、導入し、使い方を覚える。
これでは、個別の問題に対する対応は増えても、企業や組織として問題に対応する力が蓄積されにくくなります。
手段は、その問題への答えになっても、考え方にはならない
例えば、ある企業で顧客からの問い合わせ対応に時間がかかっていたとします。
そこで、問い合わせ管理ツールを導入したとします。
問い合わせを一か所に集め、担当者を割り当て、対応状況を管理できるようになれば、以前よりも対応しやすくなるかもしれません。
しかし、次のような点が曖昧なままだったらどうでしょうか。
- 問い合わせをどのように分類するのか
- 誰がどの問い合わせに対応するのか
- どのような場合に責任者へ確認するのか
- 回答の品質をどのようにそろえるのか
- 顧客情報をどこまで記録するのか
- 対応完了をどのように判断するのか
これらが整理されていなければ、ツールを導入しても、担当者によって使い方や判断が変わってしまいます。
ツールによって情報を置く場所は決まったとしても、業務の進め方そのものが整理されたわけではありません。
さらに、問い合わせ対応とは別の業務で似た問題が起きたとき、そのツールの使い方をそのまま応用できるとは限りません。
手段は、特定の問題に対する答えにはなります。
しかし、それだけでは、別の問題にも使える考え方が身につくとは限らないのです。
考え方とは、手段を選ぶための判断基準である
ここでいう「考え方」とは、難しい哲学や精神論のことではありません。
問題をどのように捉え、どのような順番で整理し、何を基準に判断するのかという、問題解決の土台です。
例えば、次のような問いを持つことです。
- 今、起きていることは本当に解決すべき問題なのか
- 表面に見えている現象と、その原因は何か
- 誰が、どのような場面で困っているのか
- 現在の業務は、どのような入力・処理・出力で成り立っているのか
- どの状態になれば、問題が解決したといえるのか
- その状態を継続するために必要なことは何か
- 手段を比較するとき、何を評価基準にするのか
こうした考え方を持つことで、初めて複数の手段を比較できます。
反対に、判断基準がない状態で手段を選ぼうとすると、次のような理由に影響されやすくなります。
- 有名なサービスだから
- 多くの会社が利用しているから
- 最新の技術だから
- 多機能だから
- 営業担当者に勧められたから
- 競合企業が導入しているから
もちろん、これらも参考情報にはなります。
しかし、自社が何を実現したいのか、どのような業務状態を目指しているのかが定まっていなければ、その手段が自社にとって本当によいものなのかを判断できません。
よい手段は、企業ごと、業務ごと、状況ごとに異なります。
だからこそ、手段を選ぶ前に、選ぶための考え方が必要なのです。
考え方から始めると、問題解決の力が組織に残る
考え方から問題に向き合うことの大きな価値は、その考え方を別の課題や問題にも応用できることです。
例えば、業務を次のような視点で見る考え方を身につけたとします。
- 何を入力として受け取るのか
- どのような処理を行うのか
- 何を結果として出力するのか
- 誰が担当しているのか
- どのような判断が行われているのか
- 情報がどのように受け渡されているのか
この見方は、問い合わせ対応だけに使うものではありません。
営業、受発注、請求、採用、顧客管理、商品開発、社内承認など、さまざまな業務に利用できます。
一つの問題への対応を通じて、別の問題にも使える判断力や構造化する力が組織に残ります。
これは、特定のツールの操作方法を覚えることとは異なります。
ツールが変わっても、技術が変わっても、業務や事業環境が変わっても、状況を整理し、必要な手段を選び直せる力です。
私たちは、この力を「手段に依存しない問題解決力」だと考えています。
考え方を把握することから始めると、目の前の問題を解決するだけでなく、その先の変化にも対応できる力につながります。
それは、経営者や責任者個人の判断力になるだけでなく、組織全体が継続的に成長するための土台にもなります。
考え方は、手段を不要にするものではない
考え方が重要だとお伝えすると、「考えてばかりで、実行が遅くなるのではないか」と感じる方もいるかもしれません。
しかし、考え方と手段は、どちらか一方を選ぶものではありません。
考え方は、手段を不要にするものではなく、手段をよりよく選び、より効果的に使うためのものです。
考え方だけで問題が解決するわけではありません。
実際に業務を変え、ツールを導入し、システムを構築し、運用を続けるためには、具体的な手段が必要です。
ただし、先に考え方を整理しておくことで、
- 何を実現するための手段なのか
- なぜその手段を選ぶのか
- どの範囲に利用するのか
- どのような結果を期待するのか
- いつ見直すべきなのか
を明確にできます。
考え方と手段は対立するものではありません。
考え方が手段の方向を定め、手段が考え方を現実のものにします。
SWITCHサービスシリーズが、準備から始める理由
株式会社ワザーップのSWITCHサービスシリーズでは、いきなりツール導入やシステム構築から始めることを基本としていません。
それは、手段を提供する前に、企業や組織が何を実現したいのか、そのために何を整理する必要があるのかを明確にすることが重要だと考えているからです。
SWITCHサービスシリーズは、IT・AI活用を準備 → 実装 → 継続的な活用という順番で進めます。
最初の段階を担う「IT・AI活用準備SWITCH」では、業務、タスク、情報、判断の状態を整理します。
どのような業務があり、誰が何を行い、どのような情報を使い、どのような判断をしているのか。
そして、ITやAIをどこに、何のために活用するのか。
こうした考え方と前提を整理し、企業を「IT・AI活用 Ready状態」にすることを目指します。
そのうえで、定型的な作業やデータ管理、業務フロー管理を仕組みにする場合は「IT活用SWITCH」へ進みます。
人間の認識・理解・判断や、情報の整理・構造化を支援する場合は「AIプラスSWITCH」へ進みます。
考え方を整理してから手段を実装することで、単にシステムやAIを導入するのではなく、企業にとって必要な形で活用できるようにします。
手段を選び続けられる企業へ
企業を取り巻く状況は、常に変化します。
事業が成長すれば、業務も変わります。
人が増えれば、役割や情報の流れも変わります。
顧客の要求が変われば、必要な対応も変わります。
ITやAIの技術も、これから変化し続けます。
そのため、一度よい手段を選べば、その後は何も考えなくてよいということにはなりません。
必要なのは、その時々の状況を整理し、自社に合った手段を選び直せることです。
手段を持つことだけではなく、手段を選び、使い、評価し、見直すための考え方を持つこと。
それが、変化に対応しながら企業価値を生み出し続けるための力になります。
SWITCHサービスシリーズが提供したいのは、特定の手段だけではありません。
企業が自らの業務を理解し、よりよい手段を選び続けられる状態を、お客様と一緒につくることです。
その考え方をまとめた記事として、まずは「IT・AI活用を失敗しない為に ― SWITCHサービスシリーズのコンセプト」をご覧ください。
また、SWITCHサービスシリーズの最初のステップである準備については、「IT・AI活用準備SWITCHのコンセプト」で詳しく説明しています。
自社の業務を整理し、IT・AI活用のための土台をつくる具体的なサービス内容については、「IT・AI活用準備SWITCH」のサービスページをご覧ください。






Comments (0)