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IT・AIを「導入しない」という選択肢

IT・AI領域の意思決定を考える(継続中)
1. IT・AI導入を「良さそう」で決める前に考えるべきこと
2. IT・AIを「分かったつもり」で経営判断しないために
3. IT・AIの経営判断で整理すべきこと
4. IT担当者やベンダーの提案を経営判断につなげる方法
5. IT・AIを「導入しない」という選択肢

はじめに

経営者の皆さんのためのIT・AI領域の意思決定支援を行う中で、考えたことや感じたことを綴るコラムシリーズ「IT・AI領域の意思決定を考える」の第5弾記事です。

ITツールやAIサービスについて調べていたり、IT担当者やベンダーの提案内容を聞いている

「導入した方がよさそう」
「今後はAIを使わないと遅れるかもしれない」
「競合も使い始めているらしい」

と感じることがあります。
もちろん、ITやAIを活用することで、大きな効果を得られることはありますが、それは「絶対」ではありません。
経営判断として考えたとき、選択肢は「何を導入するか」だけで考えるのはリスクを大きく含んでいる可能性があります。

導入しない。
今は導入しない。
もう少し調べてから判断する。

これらも、IT・AIに関する重要な選択肢です。

もちろん、すべてのIT・AI導入で「導入しない」という選択肢の重みが同じというわけではありません。
たとえば、基幹システムのように事業全体を支える仕組みについては、初期導入はもちろんのこと、老朽化や事業継続や制度対応などの理由から、何らかの対応が必要になることがあります。
その場合、「導入しない」という選択肢の優先度は大きく下がります。

ただ、特定の業務を効率化するためのITツールやAIサービスについては「導入しない」は重要な選択肢となるわけです。
例えば、導入によって得られる効果と、新たに発生する費用・運用負担・リスクを比べた結果、既存のやり方を改善することで対応する方がよいこともあります。

この記事では、IT・AIを「導入しない」という判断について考えてみます。

「導入するかどうか」を決めるのが意思決定

IT・AIについて検討を始めると、いつの間にか話が

「どのサービスがよいか」
「どの会社に依頼するか」
「いくらで導入できるか」

に進んでしまうことがあります。
しかし、その前に考えるべきことがあります。

そもそも、導入することが自社にとって適切なのか。

IT・AIに関する意思決定では、最初から導入を前提にする必要はありません。
たとえば、検討した結果として、

  • 導入する
  • 小さな範囲で試す
  • 追加で情報を集める
  • 時期を見直す
  • 既存の方法を改善する
  • 今回は導入しない

といった結論が考えられます。

重要なのは、最初から「導入する方向」で考えるのではなく、複数の選択肢を並べたうえで、自社にとって適切なものを選ぶことです。

「便利そう」と「導入する価値がある」は同じではない

新しいITツールやAIサービスを見たり、IT担当者やベンダーの提案内容を聞いていると、それがとっても便利そうに感じることがあります。

作業時間が短くなる。
情報をまとめやすくなる。
これまでできなかったことができるようになる。

こうしたメリットは、もちろん重要です。
一方で、実際に会社で使うとなれば、それだけを見て判断することはできません。
導入費用だけでなく、

  • 初期設定
  • データの移行
  • 社内への説明
  • 利用方法の習得
  • 運用ルールの作成
  • 確認や修正
  • セキュリティや権限管理
  • 継続的なメンテナンス

など、新しい作業や負担が発生することもあります。
一つの作業が10分短くなったとしても、そのために別の管理作業が増えるのであれば、会社全体として本当に負担が減ったとは限りません。

つまり、「使えるか」「導入する価値があるか」は別の問題です。
技術的に実現できることだけでなく、効果、費用、継続負担、リスクまで含めて考える必要があります。

「導入しない」は失敗ではない

検討を始めた以上、何かを導入しなければならない。
そのように考えてしまうこともあります。
しかし、十分に検討した結果、

「今回は導入しない」

という結論になることは、決して失敗ではありません。
むしろ、

「期待したほど効果が大きくない」
「今の会社には負担が大きすぎる」
「別の方法で解決した方がよい」
「まだ判断するための情報が足りない」

と分かったのであれば、それも意思決定によって得られた重要な結果です。
場合によっては、既存のExcelの使い方を見直すだけで十分かもしれません。
業務ルールを少し変える方が、費用も負担も小さいかもしれません。
あるいは、半年後に状況が変わってから改めて検討した方がよいこともあります。

IT・AIを使うことが目的ではなく、会社の課題をよりよい形で解決することが目的です。

その目的に合わないのであれば、無理に導入する必要はありません。

「今は導入しない」と「活用できる状態ではない」は分けて考える

ここで、一つ整理しておきたいことがあります。

「導入しない」という判断には、いくつか理由があります。
たとえば、

経営判断として、導入する価値が低い。

という場合があります。
一方で、

導入したいテーマではあるものの、現在の業務や情報の状態では十分に活用できない。

という場合もあります。
この二つは、同じではありません。

前者は、目的、効果、費用、リスクなどを整理したうえで、導入しないと判断する話です。
後者は、取り組むテーマ自体には価値がありそうでも、実際にIT・AIを活用するための業務や情報の整理が必要な状態です。
その場合は、すぐに導入するのではなく、まずIT・AIを活用できる状態を整えるという選択肢があります。
この考え方については、なぜAI導入の前に業務整理が必要なのかIT・AI活用 Ready状態とは何かでも詳しく説明しています。

IT・AI活用 Ready状態とは何か

大切なのは、

「導入するかどうかの判断」と「導入するための準備」を混ぜないことです。

IT・AIの意思決定では「やらない」ことも決める

経営には、使える時間も予算も人も限りがあります。
一つのIT・AI施策に取り組むということは、その分、別のことには取り組めなくなるということでもあります。
だからこそ、

「できるから導入する」
「便利そうだから試す」
「周りが使っているから始める」

だけではなく、

今、自社が取り組むべきことなのか。

まで考える必要があります。
そして、その答えが

「今はやらない」
「今回は導入しない」

であっても問題ありません。
むしろ、何をやるかだけでなく、何をやらないかを決めることも経営判断の一部です。
IT・AIについても同じです。

導入、延期、追加調査、既存運用の改善、非導入。

複数の選択肢を並べ、自社の目的や状況に照らして選ぶ。
それが、IT・AIを「良さそう」で決めないために必要な考え方です。

IT・AIに関する情報や選択肢を、経営判断に使える形へ整理したい場合は、IT・AI意思決定SWITCHでサポートしています。

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