
IT・AI導入を「良さそう」で決める前に考えるべきこと
はじめに
経営者のためのIT・AI領域の意思決定支援を行う中で、考えたことや感じたことを綴るコラムシリーズ「IT・AI領域の意思決定を考える」を開始します。
本記事は、その第1弾の記事です。
「このAIサービス、便利そうだから使ってみよう」
「他社でも導入しているらしいから、うちでも検討しよう」
「ベンダーから良さそうな提案をもらったので、進めてみよう」
ITやAIについて、このように検討が始まることは珍しくありません。
新しいサービスを知ることや、実際に試してみること自体が悪いわけではありません。
ただしこのような「良さそう」という最初の印象を、そのまま経営上の意思決定に結びつけることには大きなリスクがあります。
今回は「最初の印象をそのまま意思決定に直結させない」ことが重要というお話をさせていただきます。
「良さそう」は判断材料のひとつでしかない
便利そうなサービスを見つけると、そのサービスで何ができるのかに目が向きやすくなります。
たとえば生成AIであれば、
- 資料を作れる
- 文章を要約できる
- 問い合わせ対応を効率化できる
- データを分析できる
といった機能をみれば「便利そうだ!」と誰でも思うものです。
しかし、「できること」と「自社がやるべきこと」は同じではありません。
自社の課題に合っているのか。
今取り組む必要があるのか。
導入後の運用まで考えると、本当に効果があるのか。
「良さそう」の次には「実際に使った場合、事業や業務にどのような影響があるのか」を整理し、そのうえで判断する必要があります。
IT・AIには導入後の負担もある
考えるべきなのは、「実際に使った場合、事業や業務にどのような影響があるのか」だけではありません。
IT領域のガバナンス、コスト、運用体制など、あわせて考えるべき周辺要素も多くあります。
「良さそう」と感じるときは、機能や期待できる効果に目が向きやすい一方で、次のような導入後の負担までは見えていないことがあります。
- 導入費用
- 利用料金
- 初期設定
- 社内への説明
- 操作を覚える時間
- データの整備
- 運用ルールの作成
- セキュリティ対策
- メンテナンス
- トラブル時の対応
一つの作業が時間短縮できても、それにまつわる別の管理作業が増えれば、会社全体ではそれほど効率化されていないこともあります。
IT・AI導入では、「何ができるか」だけでなく、「そのために何が増えるか」まで見る必要があります。
他社でうまくいったから、自社でもうまくいくとは限らない
ここまでの説明でお分かりいただけると思います。
他社でうまくいっている事例があっても、その会社と自社では、業務や体制、運用条件などが異なります。
同じ結果が得られるとは限りません。
事例を参考にするのはよいことです。
参考にする際に「なぜその会社では効果が出たのか。その条件は自社にも当てはまるのか」を考え、他社事例を自社の意思決定に使える判断材料へ置き換える必要があります。
ベンダーの提案も判断材料のひとつでしかない
「よさそう」のネタはベンダーやシステム会社の提案であることも多いですね。
専門家からの提案であるほど、「よさそう」と感じることもあると思います。
ここでも「よさそう」を意思決定に直結させて経営判断に繋げないようにする重要性を思い出してください。
ベンダーやシステム会社からは、「御社の状況に合っています」という前提で提案を受けることもあるでしょう。
相手も自社の状況を調べたうえで提案していることがありますから、最初から否定する必要はありません。
重要なのは、専門家のそういった意見も「一つの判断材料にすぎない」とできるかどうかです。
自社の状況に合っているのか、本当に必要なのかを最終的に判断するのは経営者・事業責任者です。
専門家の意見は、そのための重要な判断材料のひとつとして扱う必要があります。
必要な情報を整理し、経営者・事業責任者自身が納得して意思決定できる状態をつくる必要があります。
IT・AIの判断では「やらない」も選択肢
「よさそう」から検討をスタートしたとしても、検討を進める中では、「今回はやめておこう」という選択肢も常に残しておく必要があります。
「やる」ことを前提に進めると、途中から「なぜ導入するべきか」という理由を探す方向(導入を正当化する方向)に判断が偏ることがあります。
これは意思決定にとって、大きなマイナスになります。
以下のような選択肢を常に持っておくことが、しっかりとした整理と冷静な判断に繋がると思います。
- 今すぐ導入する
- 小さく試す
- 追加で情報を集める
- 別の方法を検討する
- 業務を整理してから再検討する
- 今回は導入しない
「よさそう」を意思決定に使える判断材料へ整理する
ITやAIは、会社の課題を解決するための手段です。
だからこそ、判断するときはツールやサービスから考えるのではなく、
- 何を解決したいのか
- 現在どのような状態なのか
- どのような選択肢があるのか
- それぞれの効果・負担・コスト・リスクは何か
- 今取り組むべきなのか
という順番で整理することが重要です。
IT・AIに詳しくなければ判断できない、ということではありません。
経営者や事業責任者が判断するために必要な情報を整理し、比較できる状態にすることが大切です。
IT・AI意思決定SWITCHが支援すること
株式会社ワザーップでは、このようなIT・AIに関する経営判断を支援するサービスとして「IT・AI意思決定SWITCH」を提供しています。
ITやAIの導入を勧めることが目的ではありません。
経営者・事業責任者と一緒に、
- 何を判断する必要があるのか
- どのような事実や前提があるのか
- どのような選択肢があるのか
- それぞれにどのような負担・コスト・リスクがあるのか
を整理し、自社として判断できる状態をつくることを支援します。
支援には、専門家から得られた情報や意見を、経営者・事業責任者が意思決定に使える形へ翻訳・整理することも含まれています。
専門家から得られた情報のどこを判断材料として見るべきか、また、提案する側の立場や前提がどこに含まれているのか…
こうした情報を経営者・事業責任者の視点で整理・翻訳することが、納得できる意思決定のために重要だと考えています。
整理した結果、「今はやらない」という結論になってもよいのです。
経営者・事業責任者が、必要な情報を整理したうえで納得して意思決定できることが目的だからです。
また、検討を進める中で、詳細な業務診断や業務構造の整理が必要だと分かる場合もあります。
その場合は、詳細な業務診断・業務構造化を行い、IT・AI活用 Ready状態をつくる「IT・AI活用準備SWITCH」をご提案させていただきます。
おわりに
IT・AIは、うまく活用できれば企業にとって大きな力になります。
特に、限られた人員や予算の中で経営判断を行う中小企業やスタートアップ企業にとっては、重要なテーマです。
だからこそ、
「便利そう」
「流行っている」
「他社が使っている」
「提案された」
という理由だけで決めるのではなく、
自社にとって本当に取り組む価値があるのかを整理し、自社として判断することが重要です。
IT・AIを「何を導入するか」から考えるのではなく、「何を判断する必要があるのか」から考える。
それが、IT・AI活用を失敗しにくくする最初の一歩です。






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