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「AIを導入すれば業務効率化できる」は本当か

中小企業のためのIT・AI活用準備ガイド(継続中)
1. IT・AI活用 Ready状態とは何か
2. なぜAI導入の前に業務整理が必要なのか
3. 中小企業のIT活用がうまくいかない本当の理由
4. 業務カルテという考え方
5. 「AIを導入すれば業務効率化できる」は本当か

はじめに

「AIを導入すれば、業務を効率化できる」

AI活用を検討するとき、このように考えることは多いのではないでしょうか。
たしかに、AIによって文章作成や情報整理、要約などにかかる時間を短縮できる場合があります。
しかし、一部の作業時間が短くなることと、業務全体が効率化することは同じではありません

AIで作業時間が短縮できたが、業務全体に費やす時間が増えた実例

先日こんなことがありました…

Claude Codeを使ってとあるツールを開発しています。
ツールの各ビジネスロジックに対してユニットテストを用意していますが、途中で仕様の変更を行ったのでユニットテストのコードの変更も必要になり、これをClaude Codeに実施してもらいました。
ユニットテストのコードは満足のいく内容でしたので、ユニットテストコードの変更内容をまとめてもらうためにADR(Architecture Decision Record 意思決定内容のログ記録)の作成を依頼し、変更内容を表にするように依頼したのです。
作成された表を見ると1つの列のタイトルに「内容」というのがありました。
その列のデータをみると「○○の利用有無」を示すフラグを記述してあります。
どういう意図で「内容」というカラム名にしたのかをClaude Codeに聞くと「わかりやすくするためです。カラム名決定は些末な課題でしたので確認せずに決めました」とのこと。

  • 業務の表のカラム名を些末な問題としたこと
  • 「○○の利用有無の内容」という意味から「内容」を選択したこと

に驚愕しながら、カラム名を「○○の利用有無」に修正させ、少しCLAUDE.md(Claude Code用のカスタム指示を書くファイル)を更新したのでした。

ユニットテストを書くという作業はとても短くなりました。
しかし、その内容を記録する作業まで含めて、業務全体を見ると…

  • 実施意図を確認する
  • どういう判断過程だったかを確認する
  • あるべき姿を検討する
  • あるべき姿に修正する
  • 再発防止対策を施す

という「なくてよい」過程が発生したのです。
これを『業務全体を効率化できた』と評価できるでしょうか?

私にはできません。
AIを使ってツール開発を行うという体制を決定したのは私です。
バグの混入や、作業の複雑化を招かないよぅに慎重に進めていましたが、「表のカラム名決定判断を軽視する」は完全に想定外でした。

これはとても小さな例ですが、業務へのAI活用のメリットとデメリットが凝縮されている様に思いました。

広くプログラミングの現場で使われているClaude Codeで起こったことです。
あらかじめ明確になっている要件・仕様であれば、問題なく実現できることも多いでしょう。
しかし、すべての開発現場で要件・仕様がきっちり網羅されているわけではないでしょうし、今回のように「想定しない謎の判断」は事前の明確化は無理です。
「このレベルの判断で多くのコードが生まれている」と思うと、とっても恐怖を感じます。

AI導入の効果を考えるときは、AIが担当する作業だけではなく、その前後を含めた業務全体を見る必要があるのです…
そして業務全体は見えている部分だけを指しているわけではありません。
見えていない部分…ここを如何に想像力や経験でカバーするか…これが大きな課題になります。

業務でAIを活用する場合、『あ、AIが代わりにやってくれた!』だけでは済ませられないことがあります。

もう一つ分かりやすい例

前節で書いた例でも明らかですが、もう少し一般的な例でも見てみましょう。

たとえば、これまで人が30分かけて作成していた文章を、AIを使って5分で作れるようになったとします。

これだけを見ると、25分の時間短縮です。
しかし実際の業務では、AIが文章を作ったあとに、

  • 内容が正しいか確認する
  • 誤りや不自然な表現を修正する
  • 必要な情報が抜けていないか確認する
  • 想定外の出力が出た場合に対応する

といった作業が発生することがあります。

AIによって「作る時間」が短くなっても、その後の確認や修正に時間がかかれば、業務全体としての効果は小さくなる可能性があります。
ツール開発よりも、文章作成の例の方がピンとくる方も多いのではないでしょうか?

AIで作成した文章でも、確認や修正が不十分であれば、不自然さが残ることがありますし、それは読み手に多くの場合伝わってしまいます。

AIに文章を作らせるのは悪いことではありません。
私のこのブログ記事だって原稿案はAIに作らせています。
私の場合はそのまま使わず、それを読みながら自分でゼロから書くのですが。
私は「原稿案を書かせる」をAIにやらせていて「原稿を書かせる」はやらせていないということです。
AI活用はAIに役割としてなにを担わせるかがポイントで、それによって業務全体への影響が決まると思います。
『案を作る』という独立させやすい工程にAIを置くと、文章作成であってもとってもいい具合に活用できると思います。

「AIでできるか」より「業務全体で価値があるか」

AI活用を検討するとき、

「この作業はAIでできますか?」

という質問から始まることがあります。
しかし、業務で利用するのであれば、もう一つ考えたいことがあります。
ここまで2つの例で見てきたとおり…

「AIを使った結果、業務全体として価値があるか」

という視点です。
AIで一つの作業を高速化できても、その前後の業務が整理されていなければ、十分な効果が得られません。
大事なことだから何度でも言っていますが、「しつこい」などと思わないでください。
本当に大事なので。

反対に、業務の流れや情報、判断方法が整理されていれば、AIを使う場所と人が担当する場所を分けやすくなります。
その結果、AIを活用すべき業務なのか、別の方法で改善した方がよいのかも判断しやすくなります。

AIを導入する前に、現在の業務を確認する

AI導入を検討するのであれば、まず現在の業務について、

  • 何を入力としているのか
  • どのような作業をしているのか
  • どこで人が判断しているのか
  • どのような結果を出しているのか
  • どこに時間や負担がかかっているのか

を確認しておくことが重要です。
これまでのコラム記事やサービス紹介で言ってきた「IT・AI活用 Ready状態」を獲得しておくということです。

そのうえで、

「AIに任せる部分」
「人が確認する部分」
「人が判断する部分」

を整理します。
AIの出力は、必ずしもそのまま業務の最終結果になるとは限りません。
特に判断を伴う業務では、AIを人の理解や判断を支援するために使い、最終的な判断と責任は人が持つという設計も重要になります。

AIを導入しない方がよい場合もある

業務を整理した結果、必ずAIを導入しなければならないわけではありません。

確認や修正の負担が大きい場合や、AIを導入するより、現在の業務そのものを整理した方が効果が大きい場合には、

  • まず業務を整理する
  • 別のITツールを使う
  • 現在の方法を改善する
  • AI導入をいったん延期する

といった選択肢もあります。
AIを導入すること自体が目的ではありません。

自社の業務にとって、どの方法が最も価値があるかを考えることが重要です。

まとめ

AIによって、一部の作業時間を大きく短縮できることはあります。
しかし、

「AIで作業時間が減る」=「業務全体が効率化する」

とは限りません。

AIを導入するときは、AIが減らす作業だけでなく、確認・修正・例外対応・運用管理など、新しく発生する作業も含めて考える必要があります。
そのためにも、AIツールを選ぶ前に、まず現在の業務の流れや情報、判断方法を整理することが重要です。
AI導入前の業務整理については、以下の記事でも詳しく説明しています。

なぜAI導入の前に業務整理が必要なのか

ワザーップでは、ITやAIを導入することを前提にするのではなく、現在の業務を整理し、IT・AIを活用できる状態をつくる「IT・AI活用準備SWITCH」を提供しています。

自社の業務がIT・AIを活用できる状態になっているか確認したい場合は、IT・AI活用準備SWITCHのサービス内容もご覧ください。

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